出会いの本〜出会えてよかった〜
歩き続けること10分。
あれ?この前は3分で着いたのに。
ほら!入り口の方から行かなかったからこうなったんだ!
無言で歩いてるから余計に時間が長く感じられるのかもしれない。
「あ、あの…まだかな?」
前を歩いていた水守が振り返り
「ん。」
といって顎で示した方を見る。
そこには古ぼけた小屋があった。
ん。
じゃないよ。なにこれ。
「あれ?君の家どうしたの?あれだったっけ?」
1日の間に何があったんだ。
「それも後。」
「はいはい。そーですか」
信じられないけどどうやらあの子のお家だそうだです。
たぶん、前来た時は薄暗かったからわかんなかったんだ。
そうだよ。きっと…うん。
「かえりましたー」
そういって中に入った。
中は前と変わらず本が山積みになっていた。
奥から章一さんの
「おーう。おかえりー」
という声がした。
「お邪魔しまーす」
人様のお家に上がるんだからね
「あら?この声は…」
ドタドタという音がして大量の本の雪崩とともに現れた章一さんは私を見て
「あら!いらっしゃい!隼汰、美冬ちゃんが来るならそう言ってくれたらよかったのに!」
あはは…
本に埋れてる章一を見ると苦笑いしか生まれてこない。
私の死に際のようで…
「じぃちゃん。今日こいつにあのこと言うから。」
さっきまで朗らかに笑っていた章一さんはその言葉を聞いてすごく真剣な顔になって
「そうか。」
そういって本の中から抜け出した。
そしてリビングに入るとコタツに座りお茶が出てくるのを待っていた。
別に図々しくお茶くださいって言ったわけじゃないから。
朗らかにお茶を持ってきてくれた章一さん。
その朗らかなまま私に言った。
「今から隼汰が言うことは君にとって衝撃でしかないと思うけど、これは君にしかできなくて。いや、君と隼汰にしかできなくて。ちゃんと受け止めと欲しいことなんだ。」
そんなに…?
衝撃的…
そんなことを受け止めたくないってのが本音。
でも、ここでは嫌です。なんてことばは言えない。