出会いの本〜出会えてよかった〜
私はいつの間にか水守を抱きしめていた
同情なんかじゃない。
こいつの語ることがあまりにも辛ことなのに、それを堪えて、辛いって言わずに抱え込んで、あやふやな存在が帰ってくるはず場所を守って行こう行こうと決めた顔が、わたしは見ていて辛かった。
いや、見ていたくなかった。
だからその顔が見えないように抱きしめたのかもしれない。
「おい…なにしてんだ」
私に抱きしめられながら言う
「別に。」
「離せよ」
「やだね」
「同情ならすんな」
「私があんたに同情とかできるやつだと思うか?私はそんな非常識なことできないね。同情するにも、そんな経験したことないし」
「…」
いつのまにか章一さんはいなくなっている。
気を遣ったのか、それとも。
「そんなさ、でっかいこと1人で抱えるの辛くない?」
「もう慣れた」
「私は辛いね。泣き叫びたいね。誰かに助けを求めたいね」
「辛くない。泣かない。助けを求められるやつなんていない」
強がってるように見えること言葉。
でも、きっと、本心から言ってるんだってこと。
それが本心だって思い込んでる
「今のあんたをさ支えられるのって、章一さんと私しかいないと思うんだけどな」
「は?お前になにができんだ」
「だって、彼女じゃん」
仮彼女だけど、特権くらい使えるだろう。
「ふーん、彼女か」
そう言うと背中に手が回される
「悪くないな」
「でしょ?」
「なんか落ち着く」
「ははっ、悪くない」