出会いの本〜出会えてよかった〜


私は適当に歩いた


目的地も決めず、只ひたすら。


なんでこんな事をしてるかなんて、わからない

私が知りたいくらいだよ。

衝動的に、見知らぬ土地へ行って、見知らぬ人に挨拶をして、見知らぬ川を眺める


一人になりたい

誰も私のことを知らない所に行きたい



人との縁を断ち切りたい



どう考えても病んでる


病んでるよ私。


きっと、最近慣れないものに触れ過ぎたんだ


友達とか、恋人(仮)とかにさ


どこかで怖がってるんだ

人と接することを。

人と親しくなることを。


いつか、別れが来る年ってるから。

早かれ遅かれ。


大きな傷をつけたんだよ

別れは

私の心に

繊細でガラスのハートの私の心に


わかってる。わかってるわよ!


私は弱い。弱い故に別れが怖い。


土手の草原でボーっと川を眺める私の耳に、まるで昔を思い出させるかのような音声が届く


「みーちゃん!待ってって!」

「普通に歩いてるよ!マコが遅すぎるんだよ!」

「えー!」



女子中学生だろうか

みーちゃん……

いつだったか、私もそんな風に呼ばれていた

みーちゃん……





「みーちゃん!」

「なに?」

「みーちゃんってば!」

「なんなのよ!」

「置いて帰らないでよ!」

「だって、希輝、彩ちゃん達と話してたじゃん」

「だってよばれたんだもん!」

「ていうか、たまには一人で帰らせろよ」

「だめ!一人で帰っちゃダメ!」


小学生の頃。

私には唯一仲のいい友達がいた

水森希輝(みずもりひかる)


なぜか、ずっと私のそばにいた

友達ってのもあったけど、見守っているかのような存在だった



「あー、はいはい」

「わかればいいんだよー♪」

私はお前の犬か?

学校からの帰り道である商店街を私達は歩いていた。


「お前の家ってどこにあるんだ?」

長い間一緒にいるけどそれを知らなかった

そして、

「山だよ~♪」

は?

「お前の家って山にあんのか?」


「うん!」

へぇ……

ホントか嘘かわかんねぇ


ボーっと歩いていた

「みーちゃん!信号赤だよ!」

「あ……ボーっとしてた」

「いつものことだね」



信号が青に変わるまでも私はボーっとしてた。


横断歩道の向こう側をぼんやり見つめていた


すると、手をおいでおいでしてる黒い影があった

あれは人間?幽霊?

不思議な存在だった

でも、その時の私はその黒い影を


「お父さん?」


そう感じてしまったんだ

「え?み、みーちゃん!?どうしたの!?」


私は歩き出していた。

影のいる方へ。

おいでおいでしてるから。

でも







信号は赤だった







私が正気に戻ったのはトラックの警笛が私の体寸前まで迫ってきた頃だった


「みーちゃん!!!」

ブッブーーーーー!


警笛と希輝の声が重なる


嗚呼。


死ぬんだ。


そう思った。


体に激しい衝撃を受ける。









ん?

血は?

膝をすりむいただけ

心臓は?

多分動いてる

トラックは?

道路の真ん中で寝転がっている私は上半身を起こしトラックを探した。


トラックは私からずいぶん離れた位置にとまっている


あれ?私、轢かれた……





息が止まりそうだった。

実際には私の息は止まっていた筈なんだ。

でも………………………………



「希輝!!!」


血だらけで横たわっている希輝を見つけた


「ひ、ひか…ひかる?」

血だらけの希輝に駆け寄りそう問い掛けた


すると、希輝はうっすら目を開けて

少し微笑んで


「ごめんね……でも、守れて……よかっ……た……」


また力なく微笑んで、希輝は


目を閉じた
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