出会いの本〜出会えてよかった〜

黒い影が消えてからも私は呆然としていた


さっき見ていたことが信じられない訳じゃない。


まだ体は小刻みに震えている


「大丈夫……大丈夫……大丈夫……」


私は何が大丈夫かわからないがそう。ひたすら言っていた。


実際、私の中で何も大丈夫じゃない


でも、昔からずっと大丈夫と言い続けてきた。

そう言ったらみんな、困らないから



三角座りをしてそう言っている私の肩に水守の腕が回される


「大丈夫か?」


ここは、やっぱりさ


「大丈夫だよ」


そう聞かれたらそう返すのが当たり前なの。


そう言ったらみんな、困らな……


「要するに大丈夫じゃないんだな」


そう言った。

いやいや、大丈夫っていったじゃん


大丈夫って……


「大丈夫って……大丈夫って言ったじゃんかぁ……」


私の頬を熱いものが流れていく


これは、涙?

なんで?

悲しいの?


いや、違うの。

ホッとしている私が心のどこかにいるのがわかる。


「強がんなよ。弱さを見せろよ。なんも、恥ずかしくねぇから」


だから、おまえが言うなそれを


「泣いてないし」

「それに触れてないし」

「抱きしめてくれてもいいよ?」

「言われなくても」


そういって、優しく、温かく私を抱きしめてくれたんだ
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