出会いの本〜出会えてよかった〜


え?山?

「貴方は山に住んでるんですか?」

「まぁ」

え…

仙人とか?

「仙人じゃねぇから」

言う前に越されたっ…!

「いやいや、そんな怪しいところに行くことは」

「本、いっぱいある」

「行きます」


そこから公園から少し歩き、森の中にある平屋の小屋のような家に着いた

私、結構前からここら辺に住んでるけど、こんなところに家なんてあったっけ?

まぁ、それは置いといて


「今鍵を開けるからの」

少年のおじいさん、章一さんが鍵を開ける。

章一とはすぐに意気投合した。

本当にいい人で私の好きな本の話しで盛り上がった。


ガチャ

鍵があき玄関の扉が開かれる。


少年は両手いっぱいに持っていた買い物袋を玄関先に置き電気をつける

明かりのともった室内は普通の家のようだった。

玄関先に本が山積みになっていることを除けば。


そして私はリビングまで通され、お茶を出してもらった。

「なぁ、あんた。風早美冬だよな?」

「うん。なんでしってんの?」

そこが一番の疑問

「重要人物だから」

「は?」

「なんでもない」

重要人物?なにが?

「で、貴方の名前は?」

そういえば少年の名前を知らなかった。

「水守隼汰。」

あー…なんか聞いたことあるかも

「名前は聞いたことある」

ていうか、水守だからここに住んでるのか。

多分違うと思うけど

「だろーな」

「なに、その自信」

「別に」

なんなんだ。

そんなことは無視して、本を読み始める。

まぁ、そのために来たんだから。

水守山公園は私の家から歩いて3分。

ということは、水守家まで歩いて3分

こんな近くにいるのになんで気付かなかったんだろ。


こんなにもリラックスできる場所を!!!


どうやら水守は章一さんと二人暮らしのようだ。

本を読み始めて2時間。

本から顔を上げる。

窓から見える外の景色は…

真っ暗だった。

時刻は七時半。

「あ、帰らなきゃ」

近くで本を読んでいた水守に伝える

「あぁ」

にしても…

本を読み終わってしまった…

基本、夜ご飯が終わってからテレビなんかを見ずに、本を読んで過ごすんだけど、今日はその本を読み終わってしまった

「…本。読み終わってしまったんだけど…」

すがるような目で水守を見つめる

「なんだよ」

すると、章一さんが

「うちの本を借りるといいよ。君の好きそうな本ならきっと見つかるよ」

天使のお言葉。

「い、いいんですか!」

「もちろんだよ」

そういって本の置いてある部屋を大体回らせてもらった。

といっても、どの部屋にも本が置いてあったんだけど。

そして、3冊ほど本を貸してもらうことにした。


「またおいで!いつでも大歓迎だから!」

「はい!ありがとうございます!」

こんなリラックスできるところにもう来ないなんてできないさ

「隼汰、家まで送ってあげなさい」

「い、いや、でも…すぐそこですし」

水守も嫌がるはず

と思ったら

「わかった」

予想外の言葉。



かくして、送ってもらうことになった。

「別に送ってもらわなくてもよかったのに」

「いや、そういう訳にはいかない。この森は危険だ」

なんて不気味なことを。

そんな危険な森によく住んでるわ
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