ひらり、舞う、恋
「佐瀬くん…、あの…、手が……」




まだ満員の電車で小声で絞り出すように言うと、佐瀬くんは特に慌てた様子もなかった。




「あ、ごめん。電車間に合わないと思ってさ。離す?それとも…繋いどく?」




耳元で小声で聞いてくるから、何だかゾクゾクして頭がちゃんと回らない。
手に汗をかいてきて恥ずかしい…




「離す…」




精一杯呟いて自分から手を離すと、佐瀬くんはまた耳元で呟いた。




「残念。」




悪戯な笑顔を見せる彼のことを、私は直視できないくらいドキドキしていた。
やっぱり女の子に慣れてるんだろうな…
知り合ってまだ数日なのに、こんなにも心が振り回されている。












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