【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀
春香さんたちは、まだ寝てるかな。
メールしなきゃ。
スマホを操作していると電話が鳴り
春香さんからだった。
「おはよう。今メール打ってたよ」
「おはよう。結衣どう?大丈夫?」
「うん。腫れはだいぶひいたよ。マスクしてみたら痣はちょっと見えちゃうけどコンシーラとか使えば見える部分はどうにか平気かな」
「一番ひどいとこは悲惨でしょ」
「戦かった相手が悪かったな。エアー彼氏ならぬエアータオルに負けた」
「あんたバカ…」
春香さんの豪快な笑い声が響いた。
「ほんと心配かけてごめんね。大和さんにもごめんなさいって伝えて」
「こっちの事はいいからさ。いろいろあったし、今まで知らなかった事を知ったりで混乱してるんじゃないかと思ってさ」
「あぁ極道さんってこと?」
「うん」
「それは、正直なとこ実感がないんだよね。ドラマとかの世界しか想像出来ないもの。でもその世界とも2人はまるで違うしね…。だから余計わからないよ。さっきも隼から電話きて話してたんだけど今までと変わらないし若頭って呼んだらやめてくれって」
「隼から電話きたんだ」
「うん。耳元のバリトンで背中がゾクゾクしたよ。まぁ私が気をつけるとこは気をつけるけど、他は何もかわらないよ。実感ないし、隼や司の優しさもちゃんとわかってるから」
「何もないと思うけど、何か変だと思ったら私よりすぐに隼か司に連絡するのよ。その方が早いから」
「うん。わかった。ほんとごめんなさい」
「ちゃんと冷やしなね」
「はい」
春香さんは、みんなが極道に関わっていることまで心配だったみたい。
それが何でもないって言ったら嘘になるけれど、実感がないのがほんとのところ。
いつも優しくて、面白くて、ほんと楽しい人たちという印象しか今はない。
それに、隼は無愛想でいい理由がわかった。
愛想がいい必要は確かにないな。
また思い出して笑った。