【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀


私の目を見ながら


「結衣、俺が怖くないか?」隼が聞いてきた。


私は首を横にふる。


「俺の生きる世界は、怖いよな」


淋しそうな顔で言うから


「ハァハァ…守ってくれるんでしょ?」口を動かすと


「当たり前だ。この世界に結衣を深入りさせたくなくて、あれこれ悩んでたけどもうやめた。結衣も腹くくれ。覚悟を決めろ」


言われてもそれがどんな覚悟なのかもあまりよくわからない。


これからも怖いことが起きるってことなのかもしれない。


返事に困っていると


「拒否権ねえんだけどな」にやりと笑う隼。



その言葉に思わず笑ってしまうと


「黙って守られてりゃいい。これからは必ず守ってやる」


だから「うん」って小さく頷いたけど


「お前、まじでわかってる?」なんて声を出し


「恐怖で、思考能力なかったなんて言われても困るからな。待ってやるから考えろ」


そう言ってギュっと抱きしめてくれた。



隼の言う恐怖感で…という意味はわかる。


今は、誰かがいてくれることが本当に心づよく、隼だからなのかどうなのかは良くわからない。


司だったらどうなんだろう…。


ふと考えていると


「まさか他の男の事考えてないよな?」なんていうバリトンボイスに


ううん、ううんって何ども首をふった。



いつまでも抱きしめてくれている隼の腕の中で



温かさと安心感から知らない間に眠りについた。




< 140 / 363 >

この作品をシェア

pagetop