【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀
私の目を見ながら
「結衣、俺が怖くないか?」隼が聞いてきた。
私は首を横にふる。
「俺の生きる世界は、怖いよな」
淋しそうな顔で言うから
「ハァハァ…守ってくれるんでしょ?」口を動かすと
「当たり前だ。この世界に結衣を深入りさせたくなくて、あれこれ悩んでたけどもうやめた。結衣も腹くくれ。覚悟を決めろ」
言われてもそれがどんな覚悟なのかもあまりよくわからない。
これからも怖いことが起きるってことなのかもしれない。
返事に困っていると
「拒否権ねえんだけどな」にやりと笑う隼。
その言葉に思わず笑ってしまうと
「黙って守られてりゃいい。これからは必ず守ってやる」
だから「うん」って小さく頷いたけど
「お前、まじでわかってる?」なんて声を出し
「恐怖で、思考能力なかったなんて言われても困るからな。待ってやるから考えろ」
そう言ってギュっと抱きしめてくれた。
隼の言う恐怖感で…という意味はわかる。
今は、誰かがいてくれることが本当に心づよく、隼だからなのかどうなのかは良くわからない。
司だったらどうなんだろう…。
ふと考えていると
「まさか他の男の事考えてないよな?」なんていうバリトンボイスに
ううん、ううんって何ども首をふった。
いつまでも抱きしめてくれている隼の腕の中で
温かさと安心感から知らない間に眠りについた。