【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀
その姿を鏡越しに見ながら
ほんとに綺麗な人だなぁってずっと見てしまって
自分の痣や傷なんてまったく鏡で見もしなかった。
スーッと綺麗に通った鼻は由香里さんに似てたんだとか
漆黒の髪が羨ましくバリトンの紡ぎだされる口元まで見つめてしまう。
綺麗な瞳でいつもはワイルドな雰囲気の隼が優しい表情で目が離せない。
「あんまり見るなよ」と文句を言われたけど
「他に見るとこないんだもん」
見つめていた事がバレて照れ隠し。
「髪も柔らけーな。洗うと真っ直ぐで印象違うな」
「くせっ毛なんだよね。乾くと毛先がくるんとしてくるよ」
「髪の色も地毛か?」
「うん。黒髪のストレートに憧れるよ。隼の髪いいね」
「結衣はこれがいい」なんて言葉に
また顔がボッと火をふいた。
春香さんがもってきてくれた化粧水をつけて少しでも火照りをさまそうとした。
髪もすっかり乾いてドライヤーを片付ける隼にありがとうってお礼を言うと
「風呂入ってくるわ。眠れそうもなかったら声かけろ」
そう言って部屋を出ていった。
隼の優しさに戸惑う。
恐怖感の中に立たされた時だからなんだろうか。
ドキドキドキドキしてしまってベッドに横になるけど眠れない。