【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀
スタンドライトをつけ部屋のスイッチを消して目を閉じた。
だけど目を閉じるとどうしてもあの時の光景が浮かんでくる。
首にナイフの冷たい感触を感じたとき、本当に怖かった。
スーッと自分の手の甲にナイフがすべる感触は死ぬかもしれないと嫌でも私に思わせた。
何度も寝がえりをうって振り払おうと思ったけれど
瞼を閉じれば浮かんできて身体が疲れていて眠りたいのに眠れなくて
瞼をあけたり、寝がえりをうったり何度もそんなことを繰り返していた。
小さくノックの音がしてそーっとドアが開いた。
「隼?」
「眠れないか?」
ベッドサイドへ歩いてきた隼が屈んで話しかける。
「結構、ビビりみたい」そう言って笑ったけど
「消毒忘れてた。やってやる」
救急箱を持った隼がベッドに座るとそっと包帯を外し、ガーゼを捲ると顔を歪めた。
「ちっちゃい手だな」
「ちっちゃい言った?」
笑いの禁句で可笑しくなった。
「いや、言ってない言ってない。まったく言ってない」
隼も心得てるからもっと可笑しい。
消毒しながら痛そうな顔をしてて、
「消毒される私がその顔するはずだけど?」
「しみるぞ」って言いながら優しく消毒してくれた。
思ったよりも傷は大きいなぁ
そんな事を思いながら手当をしてくれるのをじっと見てた。
器用な手つきでまた包帯を巻き
「傷残らねぇだろうな…」
あまりに心配そうな隼に申し訳なくなる。