【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀
夏休みは5日間。
実際にお店が閉まっているのは3日間で、勇人さんが2日早く休みに入り
私と静香さんは2日遅く夏休みが終わる。
私と静香さんがいない2日間は少しばかり大変かもしれないが、住宅街に近いこの場所はお盆の間は静かなものなので毎年大きな問題もなくそんな休みの取り方に定着している。
夏休みの嬉しさに浮足だって繁華街へと向かった。
今日もカウンターの右から2つ目の私の指定席に座り
大和さんのテノールボイスをつまみにマティーニを飲んでいると
「なんだ。お前今日はやけに早いじゃないか」
大和さんが重厚なドアからフロアへの入口のある方を見ながら誰かに話しかけていた。
大和さんは、カウンターの中から通る人たちに声をかけることが多いから
私もさして気にもせずマティーニに口をつけた。
「予想より早く片付いてな」
私はまた声の方を向いてしまった。
そうバリトンボイスが聞こえてきたから。