【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀
私と隼の部屋の掃除にはすぐにOKをいただいた。
洗濯はすでに由香里さんから許可をもらっていたので新しい洗濯機を置いて下さる事のお礼も伝えた。
「じゃあ残るは配膳か。無理のない程度にできるかな?」
「はい」
私が返事をすると大きく頷いてから
「渡辺、ちょっといいか」
響さんが渡辺さんという人を呼んだ。
私たちの座る前の方に向かって少し年配の男性が歩いてきた。
「結衣ちゃんが、配膳の手伝いをしたいそうだ。邪魔か?」
「邪魔なんて滅相もない。ただお手を煩わせるほどのこともないと」
「本人が気が引けるらしい。怪我が治ったら手伝わせてやってくれないか?」
「はい。それでは結衣さんお願げぇしやす」
「渡辺さん、響さんありがとうございます」
嬉しくなってにこにこしている私を見ると
「手伝いするのにこんなに喜ばれるとはな」
渡辺さんも笑いながら戻って行ったけれど、時間はありあまっているし働かない居候はとにかく肩身が狭くて何か仕事が欲しい。
嬉しくなってビールをグーッと飲み干すと隼がついでくれた。
隼のグラスもあけるように笑えば隼も飲み干し今度は私がついであげた。
「結衣ちゃんは飲めるんだね」響さんのバリトンボイス。
「はい。結構飲めます」
「そうか。今度ゆっくり付き合ってくれ」
「貸さねーよ」
そう答えたのは不機嫌な隼のバリトン。
「結衣ちゃん付き合ってくれるよね?」
深みのあるバリトンにはどこまでも酔う。
「はい。もちろんです」
「チッ」
「隼も一緒に飲めばいいじゃない」
「「断る」」
「あはははは」
ここは本当に極道と言われる世界なんだろうか。
そんな風に錯覚を起こしてしまいそうになる。