【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀
「響さん、隼、ありがとうございます」
「なんでだ?」
「私に言われるより、きっとお2人に言われた方が嬉しいと思うから」
「あははは。そうか。そうなのか」
「結衣、あははは」
「また何か変だった?私そんなに変とか笑われたことなかったからすごいどうしたらいいかわからなくなるんだけど」
「あははは。ごめんごめん。可愛くて笑ってるだけだ」
「可愛いって23歳の大人ですよ」
「あぁそうだな。ごめんごめん」甘い響さんのバリトンボイス
「結衣はそのままでいい。気にするな」
そして私の大好きな隼のバリトンボイス。
私はもう泥酔状態だった。
「さて、そろそろ戻るか」
隼と響さんが立ちあがったので私も立ち上がり許可をもらった配膳の手伝いをしに行こうとすると、治ってからだと睨まれた。
響さんもダメだと横に首をふる。
このぐらい平気だからと言っても逆に気を使われると言われた。
少々過保護な気もするが、気を遣わせてしまうのは居心地が悪い。
だから挨拶だけすることにして、隼に先に部屋に戻ってもらった。
私が部屋まで1人で戻れることも隼には面白いようで
「じゃあ1人で戻ってこいよ」
横を向いて吹き出しながら響さんと食堂を出て行った。
私は3人の食器を重ねて持つと食堂の奥の方へ歩いていった。
「トレイはどこですか?」
「結衣さん、怪我が治ってからですよ」
渡辺さんに叱られた。
「ついでだったので…それでは治ったらよろしくお願いします」
挨拶すると私の手を指さしながら
「無理のないようにしてくださいね」
「はい」
私は、気になっていたことがまたひとつ解決して嬉しかった。
何もしない居候はやっぱり肩身が狭い。
神の印を見ながらスキップしたい気持ちをおさえて部屋の方へと戻った。