【完】甘い香りに誘われて*極道若頭×大人の♀
「密室でいやらしいことするなよ」
大和さんが顔を出し私のバッグとマティーニ、司さんにジーマを持ってきた。
「これすごいですね」興奮してはしゃぐ私に
「だろ?でもつーぴょんやはーたんが変なことしそうだから使ってなかった」
なんて大和さんが言うから やっぱり司さんも隼さんも如何わしい人なのかもしれない。
それでも前みたいに警戒しないで一緒にVIPROOMにいられるのは、どちらかというと司さんと会う事の方が多いからかもしれない。
次々に新しい話題をふってくれるので無言になることもなく
飲んでいる間はクスクスと笑うことが多い。
それにチャラいという印象はなくなった。
ふざけ過ぎと思う事はあるけれど本当はシャイな人で作られたものだった事に気づいた。
ふわっとした優しさで包んでくれる人だ。
少なくとも私や春香さんがいる時に司さんから女の人に話しかけた姿は一度も見たことがない。
「今、ここで話してるから席に戻ってくれるかな」
話しかけてきた女の人へも隼さんと違って無視することもなく丁寧に答える事を知った。
でも無愛想な隼さんも不器用な優しさがある。
自分が話すことは少ないけれど、私の話はどんなにくだらない事でも、何気なく呟いた事でもちゃんと聞いていて、短い言葉だけれちゃんと返してくれる。
バリトンボイスと驚くほど優しい視線が交差した時、私の心臓は高鳴りをみせることがある。
「隼さん」と呼んで「ん?」と返事をするそんな短い隼さんのバリトンだけで顔が赤くなる。
大和さんも忙しいからちょうどいいのかな…
淋しさを覚えながらもそれからは、逃げるようにVIPROOMへと避難するようになった。