お姫様
夏の合同合宿一日目。
臨時マネージャーとして参加した弥殊が買い出しから戻らない。
「荷物の重そうなお婆さんの手伝いに…」
もう一人のマネージャーが言う。
携帯は置きっぱなし。
地図も持っていない。
「まぁとりあえず飯作って食うか」
周りの奴が言って、調理が始まる。
玉葱なしのカレー。
弥殊なしのバスケ部。
何処か淋しくて、落ち着かない。
夕飯の後始末が終わっても、弥殊は戻らなくて。
俺の不安は募るばかり。
「俺、捜しに行くわ」
そう言って立ち上がったのは弥殊の元彼、中谷。
たぶん今でも弥殊を想ってる奴。
「晋も行くだろ?」
そう言って俺を見る中谷。
その目は俺の気持ちを悟っているようで。
俺は静かに立ち上がった。