お姫様
『男なら当たって砕けてこい!』
宿舎を離れるとき、池端が言った。
あれからまともに話もしてなかったのに。
俺はただひたすら走り回った。
誰よりも早く見つけたくて。
誰よりも弥殊を支える存在になりたくて。
「やっと見つけた」
暗闇の中にうずくまった俺の姫。
俺はまず監督に連絡をして弥殊を見る。
「携帯は持ち歩けよな?」
笑って弥殊の頭に手を置く。
弥殊は泣きながら笑って言う。
「ありがと、晋ちゃん」
俺はふざけたように言う。
「玉葱なしのカレーは不味かったなぁ」
玉葱のはいったスーパー袋を持ち上げて。
「弥殊のいないバスケ部も締まらなかったなぁ」
弥殊がそういうのに弱いのを知ってて。
わざと反応を伺うように言う。
弥殊が隣にいるのが嬉しくて。
優しく笑って言う。
「ゆっくり帰ろうか」