お姫様
「なぁ弥殊」
歩調を更に遅くして呼び掛ける。
「弥殊に紹介したい奴がいるんだけど」
弥殊は難しそうな顔をする。
「言ったじゃん。もうちゃんと自分で恋愛するって」
弥殊が少しきつめに言うから、俺は少し黙る。
けど覚悟を決めて、ゆっくり口を開く。
「本当は最初に紹介したかった奴なんだ。話だけでも聞いて」
本当は自分が王子になれたらってずっと思ってたから。
「そいつは弥殊のこと、他の誰よりも好きなんだ」
夜空を見上げながら言う。
誰よりも、弥殊が好きだから。
「付き合ったらきっと幸せにしてくれる」
幸せにしたいってずっと、小さい頃から思っていたから。
「弥殊のこと好きすぎる癖に、自信無くて逃げてるけど」
今思うと、本当にただ逃げてただけで。
情けなくて笑えてくる。