お姫様
しばらくして、倉庫内に人の気配。
薄暗くても分かる。
大好きな姫のことなら。
「弥殊か?」
その人影がゆっくり頷いて、何かを捜し出す。
俺はさっきの池端の言葉をもう一度考えていた。
「ねぇ晋ちゃん」
手を休めないまま、弥殊が言う。
「晋ちゃんの好きな子って誰?」
一瞬驚いて固まってしまう。
「聞いてなかったの?さっきの会話」
恐る恐る聞くと、弥殊は言う。
「え?うん」
弥殊の答えを聞いて、とりあえず安心して立ち上がる。
「ごめん、内緒」
倉庫に弥殊を残して、俺は立ち去った。