グレープフルーツ
キィ

優助がゆっくりと体育館を出て行った。

「…」

「渋谷君…?  大丈夫・」

私は優助の隣に並んで座る。

「大丈夫だよ、 ただちょっと悔しかっただけ。」

「悔しかった?」

「うん。 コーチの言ってた事、当たってたから。」

「…」

「俺さっき、恐くて目ぇつぶったんだ。」

「…そう。」

「あ、ごめんな?こんな話しちゃって。」

「うぅん。辛かったらいつでも言っていいよ。部員の心のケアもマネの大事な仕事ですら!!」

「ありがとう…あっ。」

「?」

「手当てしてくれた礼。」

優助が小さく丸めた拳をあたしの前に差し出した。

「手、出して。」

「ん。」

優助の手の平からあたしの手の平へ、黄色い包み紙が渡される。

「グレープフルーツ、食える?」

「…」

「あっ、ダメだった?なら他にも…」

「ありがとう!!」

「…お、おぅ。何?そんなに好きなのか?  飴」

「うん!!好きっていうか大好き☆あたしは飴よりおいしいおやつはないと思う!!…渋谷君っていい人だね!!」

「いいひと?」

「うん。あたし的には飴くれる人はいい人だから。特に一発でグレープフルーツくれる人は…」

「じゃあ俺、かなりいい人じゃね?」

「うん!!あっ!ねぇ…」
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