狼センセイと、内緒。
菜波side
「ビックリしたぁ…」
走りながらさっきのセンセイの表情を思い出す。
本気で心配してくれてたのかな…
いや、そんなわけないよね!
期待しちゃいけない!うん!
そう自分に言い聞かせる。
それにしてもなんであの海にいたんだろう…
死のうとしてたの、バレてないよね…?
「あ、やばい私ずぶ濡れだ…」
校門の前で今更気づく私。
仕方ない…
校長先生に言ってジャージに着替える許可もらおう…
私はずぶ濡れのまま校長室に向かった。
「失礼します」
「あ、旗手さん!
っ…!?
そんなずぶ濡れでどうしたんですか!?」
驚いた顔で私に近づく校長先生。
そりゃそうだよね…
あさからずぶ濡れだし。
雨の日じゃあるまいしっ
「すみません、ちょっといろいろあってずぶ濡れになってしまって…
ジャージに着替えていいですか?」
「全然いいですよ!大丈夫ですか??」
「すみません、ありがとうございます…」
「念のため保健室に行っておいで!」
ほ、保健室…
それはちょっと…
「…どうかしたのかい?」
「い、いえ!
行ってきます!」
逃げるように校長室を出た。
保健室は嫌だなぁ…
でも行かないと校長先生にもっと心配させちゃうしなぁ…
校長先生は私の世話をいろいろやいてくれた恩師。
だから他の先生以上に私を心配してくれる。
「久々だなぁ…行きたくないよぉ…」
更衣室でジャージに着替えて、嫌々保健室へと向かう。
そしてドアを開けようとした時、
「よぉ旗手!」
「ひっ!」
私の苦手な人が目の前にいた。
し、新城(しんじょう)先生…!
「久しぶりだなぁ。
Hしてっか?」
「……」
やっぱりこの人苦手…
新城 大地(しんじょう だいち)先生。
保健室の先生なんだけど、変態。
喋り方もチャラくて私はすごく苦手。
だけど何故か女子にすごく人気が高い。
どこも悪くないのに、新城先生のところに行く生徒も少なくない。
「…してませんから、そこどいてください…」
「ここオレの領域なんだけど?」
「うっ…」
「わりーわりー!からかいすぎた!
入れよ」
そういうテキトーなところが嫌なんだよなぁ…
なんでこんな人が人気なんだろ…
そんなことを思いながら保健室に入った。
「どうしたんだ?
いつも健康な旗手が保健室に来るなんて」
お互い椅子に座り、私の容態を心配してくれる新城先生。
「えっと…」
「まさか!
オレにやっと惚れたとか?」
「……」
キッと新城先生を睨む。
そんなことあるわけないじゃない!
むしろ嫌いです!
それに私には……
「ゴメンって!
んで、ほんとにどうしたんだよ?」
「ちょっと朝ずぶ濡れになって、一応保健室に行けって校長先生に言われたので…」
「ずぶ濡れ…?
だからジャージなんか?」
こくりと頷く私。
そっかーと新城先生は言って、ポンポンと私の頭を軽く撫でる。
それ以上何もなかった。
そういうところは気が利くんだよね…新城先生って。
「一応体温測っとくか?」
「はい…」
体温計を渡されて脇に挟む。
ピピッ
取り出して見てみると、38度だった。
「おい!熱あんじゃん!」
「そうですね…でも大丈夫です」
神風センセイが今日から担任になるし、朝のこと気にさせたくないし…
サポートしっかりしたいし。
ちゃんと平気な顔で授業出ないと…!
「大丈夫じゃねぇっての!
少し寝て行けよ!」
「大丈夫です!私行きますね」
新城先生に笑顔を見せてから保健室を出た。
ん…確かに少しクラクラするかも…
でも頑張らないと…!
自分の身体にムチを打って教室へと向かった。