狼センセイと、内緒。
聖side
だいたい今は五時間目あたりの時間帯。
授業がない俺は、1人科学準備室でコーヒーを飲んでいた。
旗手…
ぼーっとしていると、旗手のことを考えてしまう俺。
恋愛感情なんてないはずなのに、どうしても気になってしまう。
「なんでだ…
子供なんて相手にしたことない俺が…」
そう思っていたら、ドアをノックする音がした。
コンコン
「はい」
…シーン
静まり返る科学準備室。
誰だ…?
そっとドアへと歩く。
そしてドアを開けた時、
「センセイ…!」
「!?」
誰かにいきなり抱きしめられた。
でもすぐ誰だかわかる。
「旗手!?」
「せんっ…せ…」
泣きながらすがりつく旗手。
抱きしめる腕はすごく強かった。
「ど、どうしたんだ。
まだ授業中だろうが」
「うっ…ひっく…」
泣き止む様子もなく、周りの目を気にしながら部屋に旗手を入れた。
いったいどうしたってんだ…
イスに座らせてもずっと泣き続ける旗手。
初めて見るその表情に少し戸惑う。
「泣いてちゃわかんねぇから…
なんかあったんなら言えよ」
「うっ…」
俺女を慰めるの得意じゃねぇんだよ阿呆…
どうすればいいかわからないでいたら、旗手がやっと口を開いた。
「ご、ごめんなさいセンセイ…」
「どうしたんだよ?」
「なんでもないんです!
ほんと迷惑かけてすみませんでした!」
涙を拭って笑顔に戻る旗手。
こいつ…絶対何か隠してる。
海での時もそうだ。
2度は見逃さねーぞ。
「旗手」
「はい?」
「…そこ動くなよ」
「へっ…?」
俺は強引に旗手を引き寄せてキスをした。
「んんっ…!?」
驚いて身体を離そうとする旗手を力で押さえる。
身をよじっても俺の力には勝てない。
そしてそっと唇を離したら、トロンとした目で俺を見た。
その目は反則だ…
「センセイ…いきなりどうし…」
「お前が俺に本当の事を言わないからだろ」
そう言うと、沈んだ瞳で俯く旗手。
「お前は俺に素を見せていいと言った。
だったらお前も見せるべきだろ」
「それ…は…」
何か見せられない理由でもあるのかよ…!
突然イライラしてきて、旗手を強引に机の上に押し倒す。
「センセイ…!」
「言わねぇんだよな?
なら強制的に言わせてやる」
俺は何を思ったのか、旗手のシャツのボタンに手をかけた。
「やめてセンセイ!」
「嫌だ」
上から順に外していく。
両腕を片手で押さえられるほど旗手の力は弱かった。
どんどん露わになっていく旗手の白い肌に、不覚にもドキドキしてしまった。
「やめ…て!」
「!?」
思いっきり俺を蹴飛ばす旗手。
いってぇ……
意外と力強いな此奴。
「いきなりどうしたんです!?
私なにかしましたか!?」
「…お前が本当の事言わねぇからだろうが!」
部屋中に響き渡る声で怒る俺。
自分でもなんでここまでイライラしているのかわからない。
だけど、俺に何か隠しているのがどうしても嫌だった。
「なんで言えねぇんだ?
俺はそんなに頼りねぇのかよ!」
「センセイ…」
自分に今度は腹が立つ。
正直、ここまで他人を思うのは初めてだ。
だからこそわからない。
どうしてやるのが正解なのか。
俺ってこんなに不器用だったか…?