狼センセイと、内緒。


「愛を教える前に死ぬなんて…絶対許さねぇからな」

「…はい」


センセイなりの気遣いだと私は受け取った。
都合いいだけの解釈かもしれない。
だけどそう思いたかった。
キュッとセンセイの白衣を掴む。
センセイがどこにも逃げないように。


「菜波…?」

「センセイ…」


落ち着くセンセイの香り。
落ち着くセンセイの温もり。
落ち着くセンセイの声。
センセイの何もかもが私を虜にしていく。

私…ほんとにセンセイが好き…大好きだよ…

声に出して言えない感情を押さえ込む。
言いたくて仕方ない。
だけど言っちゃいけない言葉。


「菜波」


名前を呼ばれるたびにドキドキする。
何も私は言葉が返せない。
口を開けたらこの感情を言葉にしそうで怖かった。


「…ったくお前は」

「!?」


またセンセイからの突然のキス。
私は驚いて息をするのを忘れる。
すごく優しい、私を包み込んでくれるキスだった。


「んっ…」


自然と恥ずかしい私の吐息が漏れる。

身体中とろけそうなキスされたら…
声出ちゃうよ…


「はぁ…菜波」

「はい…センセイ」

「お前は本当に俺から愛が教わりたいのか?」

「えっ…」


唐突な質問に頭が真っ白になる。


「俺は正直…お前に教えてやることはできるが、あまり教えたくねぇ」

「なんで…ですか」


グサリと刃物が刺さったように胸が痛む。


「お互いに好きじゃなきゃ本当の愛なんて分かんねぇってことだよ」

「……」


確かにセンセイの言うとおり。
だけど私は本当の愛なんかを知るより、センセイと一緒にいることに意味がある。
でもそれすら言えない。


「それにお前好きな奴いるんだろ?
それなのに俺といろいろしてたら駄目だろ」


センセイ…

センセイがすごく真っ当なことを言っているのはわかる。
だけど好きな人はセンセイなんです。
だからセンセイから愛が知りたいんです。
そう言えたらどれだけ楽だろう。
私が生徒じゃなかったら良かったのに。


「センセイの…バカ」

「菜波…?」

「私は…センセイから愛を教わりたいんです!
だから何も考えないで、私に教えてください!」


今度は私から強引にキスをする。
自分からキスなんてしたことなかったからやり方なんてわからない。
だけど言葉より行動の方が伝わる。
そう思ったからキスをした。

胸が苦しくなる恋だってわかってる…
だけど…一番傷つくのは、センセイに突き放されること…


「菜波…」


気づいたら私は堪えていた涙が溢れていた。


「…本当に俺でいんだな?」

「はい…
センセイがいいです…」

「…わかった」


腕を引っ張られて、すっぽりセンセイの腕に収まる私。


「悪かったな、キツいこと言って…
分かんねぇんだよ、言葉選びが」

「センセイって器用そうに見えて意外と不器用なんですね?」

「うるせぇよ」


涙は自然と止まっていて、いつの間にか笑顔になっていた。
こんな何気ないやり取りですら、私の心を満たしてくれるセンセイ。
まだ出会ってからそんなに経っていない。
だけど私は…心の底からセンセイが好き。


「俺の特別授業はハードだぞ?」


口角を上げて言うセンセイ。


「そ、それってどういう…!//」

「さぁな」


フッとクールに笑うセンセイの横顔を見て、また幸せになる。

やばい……
私相当センセイが好きだ…////


「菜波?
どうしたんだよ」

「へっ!?
い、いや!なんでもないです!」

「また隠し事か!
許さねぇぞ」

「隠し事じゃないですー!」


もう普通に下の名前で呼んでくれるセンセイ。
こんな大好きなセンセイと、幸せな日々が続きますように。

…ほんとにハードな授業になりそうです!






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