狼センセイと、内緒。


着いたのは、科学準備室だった。

ドンッ


「きゃっ!」


センセイは思いっきり私を科学準備室の中に突き飛ばした。
ふとセンセイを見上げると、眉間に皺を寄せて怖い顔で私を睨んでいる。
そしてドアの鍵を閉めた。


「センセイ…!
どうしたんですか…!」

「……」


私の前にしゃがんでジッと見つめるセンセイ。
さっきは怒りに満ちている目だったけど、今は悲しみも見える。

センセイ…?


「…あぁ!
俺カッコ悪い」

「えっ?」


センセイは床に座り込んで頭をクシャクシャした。


「どうしたんです?」

「ほんと大人気ねぇよ俺…」


1人でなにかブツブツ言うセンセイ。

ほんとにどうしたんだろう…?


「菜波」

「せ、センセイ!?」


なにか考えているかと思えば、センセイはいきなり私を抱きしめる。
いつも唐突で、私の心臓は何個あっても足りないくらいだ。


「2人で居る時くらい名前で呼べよ…」

「ひ、聖…さん…//」


いつも以上に優しいセンセイの声。
胸がドキドキし始めた。


「それでいい…
なぁ菜波」

「はい…?」

「さっき俺、姫路に嫉妬した」


えぇ!?
し、嫉妬!?


「なっ、なんでですか!?」

「お前とほら…くっついてたし、仲良さそうに笑顔で話してたからつい…」


センセイ…

センセイは身体を離して少し拗ねたような顔をしていた。

こんな表情もするんだ…!
なんかかわいいかも!

自然と笑みが溢れる。


「何笑ってんだよ」

「いや!センセイがかわいいなって!」

「…阿呆」

「!?」


センセイからのいきなりのキス。
ビックリしたけど、すごく心地がいい。


「んっ…センセ…」

「菜波…他の男なんか見るな」


え…?


「お前は俺だけ見てろ」


真剣なセンセイの瞳。
目が全然離せない。

なんでそんなこと言うの…?


「センセイ…」

「お前は俺の特別授業を受けるんだろ…?
それなら他の男なんか目に入れるな」

「…はい」


センセイの言葉にドキドキする。

そんなこと言われたら期待しちゃうよセンセイ…

少し胸がモヤモヤする。


「菜波、お前は今どう思った?」

「へ?」


どうって…


「俺に対してどう思ったかって聞いてんだ」

「そ、それは…」


言えないよ…!


「言わないとお仕置きだぞ」

「そ、それは嫌ですっ!」

「俺は別にそっちでも構わないんだけどな?」


悪戯な笑みを浮かべるセンセイ。

もう…センセイほんと強引。

でもそういうところも好きだった。
絶対センセイからは逃れられない。


「…愛を感じました」

「ほう…それじゃあ成功だな」


え?成功…?

戸惑う私。


「俺に嫉妬されて愛を感じたんだろ?」

「はい…」

「最初の俺からの授業だよ」

「え!?」


今のが授業だったの!?

内心少しがっかりする自分。
わかってる。
私のことが好きでそんなこと言ったんじゃないって。
だけどそう思いたかった。
胸がすごく痛い。


「ま、まぁ…
演技でさっきのやったわけじゃねぇけどな…」

「え?」

「な、なんでもねぇよ」


ほんのり赤くなるセンセイの頬。

そんなこと言われたら…
期待しちゃいけないけど期待しちゃうよ…!




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