狼センセイと、内緒。
「おっと、暴れないでねー!」
男子はそう言って、私のシャツを思いっきり破った。
「ん…!?」
「へぇー、いい胸してんねー」
「それじゃあ俺から!」
「いや、俺だっつの!」
やめて…
「写真の準備できてっか?」
「おう!バッチリ!」
やめてよ…
「お前足押さえて!」
「おっけー!」
やめてよ!
センセイ助けて…!!
思いきり首を振りながら、最近イジメの頻度が減った気がしたのは思い違いだったことに気がつく。
あぁ……
私って、何をしててもダメなんだね……
そう思った瞬間。
ドォォォォン
思いっきり扉が倒れた。
センセイ!?
男子達の視線も扉へと移る。
そこに立っていたのは、センセイじゃなくて……泰斗だった。
「やっべー、俺めちゃくちゃヒーローみてーじゃん」
いつもように笑いながら部屋へと入る泰斗。
「なんだテメェ!」
「あ?
おめーらに名乗る名前なんかねーんだよ」
さっきの元気な表情とは違う、怖い表情をする泰斗。
泰斗…!
なんでここがわかったの……!
「へー…黒高かよ」
「それがどうしたってんだよ!」
「オメーら、まさか俺を忘れたとは言わせねーぜ?」
「はぁ?
てめぇみてぇな弱っちぃ見た目のやつなんて覚えてねぇなぁ!」
その言葉を聞いて、泰斗の表情が変わる。
すごく冷酷な瞳になった。
「覚えてねーなら、身体で思い出させてやるよ!」
泰斗はそう言って私達の方へと走ってくる。
怖い…!
私は咄嗟に目を瞑った。
バキバキと耳を塞ぎだくなるほどの音が部屋中に鳴り響く。
「…菜波」
「へっ…」
ゆっくり目を開けると、泰斗は無傷で私の前で笑っていた。
「遅くなってゴメンな。
怖かったろ?」
「……」
言葉を発せ無いから、首を縦に振る。
泰斗の顔を見てとてもホットした。
「今縄解いてやるから、待ってろ」
するすると縄が解けていく。
全部解けて、口元のガムテープを取った。
「泰斗っ…!」
「菜波…」
私は思いっきり泰斗に抱きついた。
今になって身体が震える。
「菜波…怖かったよな…」
「うっ…ひっく…」
泰斗の腕の中で泣く。
すごく泰斗の胸の中は安心した。
「菜波、ちょっと待ってろ?」
「へ…?う、うん…」
泰斗はそう言って立ち上がる。
向かった先は…顔がアザだらけのさっきの男子4人のところだった。
あれ…全部泰斗が自分で!?
ふと、泰斗が前にいた学校のことを思い出す。
そう言えば泰斗は不良で有名だって言ってた……
「何者なんだよお前は!」
1人の男子が泰斗にそう聞く。
「俺か?今更名乗るつもりはなかったけど…
俺は元旗高の姫路泰斗だ」
「は、旗高!?」
「姫路って…!」
「あの姫路!?」
どうやら4人の男子達は泰斗のことを知っているみたいだった。
「あの金・銀・黒・白高をも占めてた姫路…!?」
ちょっと待って…
全部不良高で有名なところだ…!
泰斗ってそんなに喧嘩強いの!?
ざっくり話は聞いていたものの、そこまで不良で有名なのは驚いた。
「それがどーしたんだよ」
「「「「す、すいませんでしたぁ!!」」」」
4人の男子は揃って泰斗に土下座をする。
すごい光景だった。
「謝るだけじゃ済まさねーんだけど」
泰斗がジリジリ4人に近づく。
私は咄嗟に立ち上がった。
「やめて泰斗!
もういいから…!」