狼センセイと、内緒。

聖side


-学校-

「これから頑張っていきたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いします」


パチパチパチ


今日は俺が新しく桜峰(さくらみね)高校の教師として、日曜日なのに職員の人達に挨拶していた。

ここが俺の教師生活するとこか…

俺は去年まで違う高校で働いていたけど、転任してこの学校に来た。

教師ってのは、結構難しい職業だ。
相手に分かりやすく教える…まぁ、楽しいけど生徒の世話は面倒だ。
…って、誰に言ってるんだ俺は。


「神風先生、これがあなたの受け持つ学級です」


校長室で校長先生が俺に出席簿を渡した。

2年1組か。
…って。


「いきなり俺が担任ですか…?」

「すまないなぁ。人手が少ないもんで…
頼まれてくれませんか?」


正直、頼まれるのは嬉しい。
期待されているのかもしれない。

でも…少し不安だ。
前の学校では担任なんてしたことなかったしな…


「不安な気持ちはわかりますよ。
私もいきなり頼みたくなかった」


俺の表情を察したのか、校長先生が断りを入れる。

あ、やべ…気ぃ使わせちまった。
俺としたことが。


「何かいい方法が……あ!」

「ん?どうかされましたか?」


校長先生が何かを閃いたみたいだ。


「あなたのクラスにとても優秀な生徒がいるんですよ。
その生徒に協力してもらうというのはどうでしょうか?」

「…ほぅ」


優秀な生徒…か。
少し気になる。
前の学校に優秀と呼べる生徒はいなかったし。


「その生徒の事、詳しく聞いていいですか?」

「おお、ぜひとも。
まぁまぁ、そこにかけてください」


俺は校長先生に言われた通り、近くのソファーに腰掛けた。


「その生徒なんですが…
とても優しく、いつも笑顔で
みんなから頼られ、みんなから好かれている生徒です」

「はい」

「先生からの信頼もあつく、また部活動では2年生にして部長。
生徒会では会計を努め、何事にも一生懸命な子です」

「ほうほう…」


そんなにすごい生徒がいるのか…
今時珍しいな。

真面目な生徒がいて、内心ホッとする。
この学校で"普通に"頑張っていけそうな気がしてきた。


「…さて、神風先生」

「はい?」

「その生徒に挨拶しに行きますか?
顔を合わせておいた方がいいでしょう」


あ、挨拶…!?
学校がない日曜日なのにか!?


「なに、緊張しなくて大丈夫ですよ。
住所はここです」


そう言って校長先生は俺に、その生徒の住所が書かれている紙を渡した。

そんなにあっさり!?
大丈夫なのか…いきなり押しかけて。
何度も言うが、今日日曜日だぞ。

少し焦りながらも、渡された紙を見る。

旗手菜波っていうのか…
まぁ、せっかく校長先生がここまで言ってくれてる事だし、とりあえず行くしかないか。


「それじゃあ、いってきます」

「はい、いってらっしゃい」


校長先生に一礼して、静かに部屋を出た。
玄関で靴を履いて、車に乗ってその生徒の家へ向かう。


「…ふぅ」


らしくない緊張をしながらも、俺は車を走らせた。













――玄関前


「ここか…」


旗手菜波という生徒の玄関前。
チャイムを鳴らそうとボタンに指を動かした瞬間…


「恋したいのぉおおおお!!!!」

「!!?」


いきなり2階の部屋から女の子の叫び声が聞こえた。

な、なんだ…!?

上を見上げたら窓が少し開いていて、そこから途切れ途切れ話し声が聞こえる。


「今の叫びはなんだったんだ…」


俺は1つ深呼吸して、チャイムを鳴らした。




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