狼センセイと、内緒。
――ピーンポーン
ガチャ
「どちら様?」
「あぁ、どうも」
出てきたのは、多分旗手菜波の兄だろう…と思う。
俺は1回咳払いして息を整える。
「旗手菜波さん…いますか?」
「菜波?何か用事でも?」
「あ、あぁ…申し遅れました。
この度、旗手菜波さんの担任教師になった神風聖です。
今日は挨拶しにきました」
「センセか!おぅおぅ!!
すげぇカッコいいセンセが担任になったもんだ!」
ニカッと笑う旗手菜波の兄。
おお…いい兄貴じゃないか。
まぁ、俺はカッコ良くないけどな。
「おーい菜波!客だぞ!!」
「は、はーい!!」
遠くから、可愛らしい声が聞こえる。
ドタドタ
急いで降りてきたその子は、とても綺麗で…つい見とれてしまった。
艶がある髪に大きな瞳。
スラリと伸びた足は、とても白くて綺麗だった。
少し身体が固まってしまったものの、すぐ立て直して自己紹介する。
「初めまして、旗手菜波さん」
「は、初めまして…」
「明日からあなたの担任になる、神風聖と言います。
よろしくお願いします」
我ながら似合わない口調だな、俺…
これ維持するのには結構努力しないといけないな。
旗手菜波は目を丸くして俺を見る。
「せ、センセイ…?」
「はい」
「あっ、わざわざ挨拶しに来てくれてありがとうございます…!」
旗手菜波は俺に一礼すると、さっきの緊張した顔とは違う柔らかい笑顔を向けてくれた。
うっ…やべぇ。
不覚にもかわいいと思っちまった…
これから俺の生徒になる人にドキドキする自分。
いつもと様子がおかしい。
胸がざわついて鼓動がうるさい。
こんな子供にドキドキするわけがねぇ…!
「……」
「……」
お互い視線を逸らさずに沈黙が流れる。
そんなにジッと見つめないでくれ…
ドキドキと高鳴っておさまらない鼓動。
見つめられていたら、すごく息が苦しくなった。
その綺麗な瞳の中にいる俺は、どんな風にお前に映っている?
これが…俺と菜波の出会い。