狼センセイと、内緒。
「俺は昔から首筋の匂いだけで相性がわかるんだ。
まぁ、今まで出会ったことなかったけどな」
「…というと…?」
そんな特技がセンセイに…!
「お前が初めて俺と相性の合う奴だって事だよ」
初めて…
こんなカッコイイ顔をしてるセンセイだから、付き合った数はきっと多いはず。
「ど、どのくらいの人とお付き合いしたことあるんですか…?」
恐る恐る聞いてみた。
「人数なんて覚えてねぇよ。
俺は相性いい奴を探してただけだしな」
「!?」
その言葉にドキッとする。
相性がいい人を探してきたセンセイ…
今、私とは相性がいいって言ったよね??
今の私はすっかり神風センセイがセンセイだということを忘れていた。
「本当に今まで相性合う人と出会ったことないんですか…?」
「そうだな」
質問していても全然理解できていない私。
ただただ頭が混乱するだけ。
「つまり私と相性が初めて合って…
どうなるんです?」
「どうなるって、まぁ…
お前が生徒じゃなかったら俺の女にしてたな」
「!//」
一瞬自分が生徒だということを悔やんだ。
な、なんでこんなに胸がズキズキするの…
「俺の女にはできねぇから、代わりに俺のサポートしてくれないか」
「サポート…?」
「赴任してきたばかりだ。
わかんないことが多すぎんだよ」
それってつまり…
「私に助けて欲しいってこと…ですか?」
「だからさっきからそう言ってるだろうが阿呆」
照れながら頭を掻くセンセイ。
えっ、もしかしてさっきから遠まわしにそう言ってたのかな…
相性どうこうの話も、もしかしてこの話に繋げるために…?
センセイって意外と不器用?
少し笑う私。
「何笑ってんだ」
「い、いや!
かわいいなーって思って!」
「うるせぇ馬鹿。
生徒が先生に向かって言う言葉か?」
軽く私のおでこを小突くセンセイ。
その表情はとても柔らかかった。
触れられたおでこがすごく熱い。
「四六時中俺といることになるけど、大丈夫か?」
「へっ…あ、はい!
大丈夫です!」
嬉しいし!
むしろ歓迎だし!
明日から楽しい毎日が送れる気がしてすごくウキウキする。
初対面だけどすごく打ち解けられた気がするし!頑張れるかも!
その自信が、センセイの一言で打ち砕かれる。
「ただし、絶対俺に恋愛感情なんて持つな」
「……」
私の頭に雷が落ちたかのような感覚。
ズキズキと胸が痛んで息苦しい。
わ、私…何を期待してたんだろう。
センセイと生徒なんだから、恋愛なんてありえない。
最初から分かってた事じゃん……
そう思う度に胸の痛みは増していく。
「旗手…?」
「……」
何も言えなくなる。
もしかして私…センセイに一目惚れ…
そう気づいた瞬間、私の身体全体が熱くなるのを感じた。
「どうしたんだよ?」
「な、なんでもないです!//」
咄嗟にセンセイに背を向ける。
見られたくない…!
気づかれちゃダメだ…!
「いきなりなんだよ。
おかしな奴だな」
「……」
傍にいるにはセンセイを好きだってバレちゃいけない…
センセイへの思いを胸にしまった。
「センセイ…」
「なんだ?」
「…恋って…なんですか?」
「は…?」
いきなりの私の質問に戸惑うセンセイ。
そうなるのも無理はない。
すごく変なことを言ってるのは私だ。
でも止まらなかった。
「愛って…なんですか?」
「……」
眉間に皺を寄せるセンセイ。
その瞳は少し濁っていた。
「…旗手」
「はい…」
返事をすると、センセイはまたゆっくり近づいてきた。
「恋とか愛って言うのは…」
「…!?」
突然のキス。
なにがなんがかわからなくなる。
センセイの唇に飲み込まれていく感覚が私を支配した。
「…はぁ」
ゆっくりセンセイが唇を離した。
少しだけ寂しいと感じてしまう私。
「言葉じゃ教えらんねぇもんなんだよ」
「……」
真剣な眼差しでそう言うセンセイ。
でも幼稚な私は少ししか理解ができないでいた。
今…なんでキスしたんですか?
好きになっちゃいけないって分かってるのに…
どんどん気になっちゃうじゃないですか…
「じゃあ…センセイが教えてください…」
「は!?」
「私に…言葉じゃ表せないものを教えてください」
決して叶わない恋。
最初からわかっているなら…
私はセンセイのしもべでもなんでもいい。
傍にいれるなら…何もいらない。