未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「信之さん、それだけは勘弁してよ。もうしないから……お願い!」


慶次は拝むようにして顔の前で手を合わせた。


「反省してるか?」

「はい、そりゃあもう……」


嘘くさいが、まあいいだろう。


「だったら条件をやる」

「条件?」

「そうだ。それを満たせば家から追い出すのは勘弁してやる」

「どんな?」

「それはだな……働く事だ」

「はあ?」

「今から1ヶ月以内に働け。アルバイトでも何でもいいが、この屋敷の外でだ。それが条件だ」

「ちょっと待ってよ。僕は働いた事が一度もないんだよ?」

「偉そうに言うな。そんなのは自慢にならない」

「そんな、無茶だよ……。他の条件にしてくれない?」

「ダメだ」

「う……」

「嫌なら出て行ってもらう」

「ちぇっ。わかったよ……。ところでさ」

「何だ?」

「小松ちゃんは?」

「ん?」

「小松ちゃんにも罰を与えるよね? 聞けば小松ちゃんが一番の“実行犯”だもんね? 相当重い罰を与えないとおかしいよね?」


慶次は、自分の事を棚に上げてそんな事を言った。ま、実際に俺はそのつもりだし、実は俺が本当に怒っているのは小松に対してだけだ。菊子さんや慶次に対しては、怒ると言うより呆れた、と言った方が正しいと思う。

慶次に働けと言ったのも、実は罰と言うよりも彼のためを思っての事なんだ。


「それはもちろん考えてるさ。その前におまえにひとつ言っておく」

「え? なになに?」

「今後、小松の事を“小松ちゃん”とか呼ぶのはやめてもらいたい」

< 104 / 177 >

この作品をシェア

pagetop