未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「えーっ?」


みんなは一斉に感嘆の声を漏らした。ただし慶次は察していたらしく、ニヤニヤ薄ら笑いを顔に浮かべていたが。

小松はと言うと、はじめはポカンと俺を見上げたが、みんなの視線に合い、可哀想に今は下を向いてもじもじしている。いや、可哀想なんかじゃないが。


「信之さん、その子はメイドでしょ? あなた、使用人と結婚するつもり?」

「そうですよ。確か父の遺言書に“令嬢と結婚する事”なんて書いてなかったはずですから、何も問題はないと思います」

「それはそうかもしれないけど、世間さまが何と言うか……」

「言いたい奴には言わせておきますよ」

「そんな事言ってもね……。その小松さんという娘さん、歳はおいくつなの?」


俺が答えてもいいのだが、本人に言わせたくて黙っていると、


「二十歳です」


小松は顔を上げ、声は小さいもののしっかりとした口調で答えた。


「お若いわね……」

「一応は成人してますからね。問題ありませんよ」

「それはまあ、そうね。ご出身はどちら?」

「はい。○○県です」

「あら。浅井菊子さんと同じなのね。偶然だわね……」


ムム。これはまずいかもしれない。小松と菊子さんの繋がりがばれたら大変だ。


「母さん、そういう話は後でいいじゃないですか?」

「あら。大事な事だと思うわよ?」

「そうかもですが……先ずは僕達の結婚を認めてもらえますか? もしダメなら、僕は誰とも結婚しませんけど」

「そんな事言われたら、認めるしかないじゃないの?」

「ですね。じゃあ、決まりという事で……」


呆れ顔の母達であったが、俺は心の中でほくそ笑んだ。

さてと、小松をどうやって虐めてやろうかなあ……

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