未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
小松というメイド
その疑問は取り敢えず置いといて、まずは聞きたい事を聞こうと思う。


「君はシーツが廊下に落ちていた、というような事を言ったけど、それしか見てないのかな?」

「あ、はい。そうですけど、他に何か……?」

「ん……例えばだけど、全裸の女性とか見なかった?」

「ぜ、全裸の女性ですか!?」


叫ぶと共に、メイドは黒目がちの目を大きく見開いた。当たり前かもしれないが、かなりビックリしたらしい。


「見てないみたいだね?」

「はい、見てませんけど、お客さまなんですか?」

「客? ああ、そうだね。客と言えば客かな」

「旦那さまの恋人さんですか?」

「え?」

「す、すみません。つい口が滑ってしまいました。どうかお許しください」


メイドは慌てて立ち上がると、俺に向かって深々と頭を下げた。


「いいんだよ、謝らなくて。普通に考えたらそうなるよね? それより、本当に見なかったかな? チラッと、後ろ姿だけでも……」

「いいえ、本当に何も見ていません」

「そうかあ」


あの女性が部屋を出てから、このメイドがドアをノックするまでほんの10秒足らずだった。その間、メイドは腰を屈めてシーツを拾い上げたりをしていたはずで、という事は、あの女性は廊下に出た後、一瞬で走り去った事になる。

だが、廊下は右に行こうが左に行こうがやたらと長い。そんな長い廊下を、メイドに見られず一瞬で走り去るなんて事は到底不可能だ。という事は……

< 11 / 177 >

この作品をシェア

pagetop