未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「すまん、大声出して……」

「いや、俺こそ悪かった。おまえはそんな奴じゃないって分かってるのに、つい口が滑った」

「そうでもないさ」

「はあ?」

「俺は小松の事を、そういうフィルターで見てた気がする」

「その人、小松って名前なのか?」

「ああ。“その人”って言うより、“その子”だな。まだ二十歳だ」

「わお、若いな!」

「何だよ、そういう事には驚くんだな?」

「そりゃあ驚くさ。二十歳と言えば、15も下だろ?」

「14だ。まだな」

「一緒だろ?」

「そうか?」

「そうさ」


とか言って、俺達はクククと笑った。


「ああ、その小松って子、この前言ってた子か? すごく可愛いとかなんとか……」

「そうだよ。忘れてたのか?」

「すまん。浅井菊子さんの方に頭が行ってた。だったら良かったじゃないか。好きな子と結婚できて」

「まあ、そうなんだけどな……」

「何だよ、浮かない顔して。悩みがあるなら聞くぞ?」


兼続は真顔になり、低い声でそう言った。


「悩み?」

「ああ。あるんだろ? 今日のおまえ、かなり変だし」

「ん……」


悩みか……。確かに俺は悩んでるのかもしれない。もちろん小松の事で。勢いで結婚する事になったが、俺はこれからどうすべきなのか、どうしたいのかが今一わからないんだよなあ。


「時間はいいのか?」

「ああ、気にするな。未来の社長のためなら、会議の一つや二つ、何でもないさ」

「よく言うよ……」


俺は兼続に話してみようと思った。今の俺の、胸の内を……

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