未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
何から話そうかとしばし考えたが、やはりあの事から話す事にした。


「昨日、母やみんなに宣言したんだ。メイドの小松と結婚するって……」

「そうか。よく認めてくれたな?」

「ああ。本来なら相当揉めたと思うが、例の遺書の期限が迫ってるから、仕方なくってところさ」

「そういう事だろうな」

「しかもあのお堅い母が言ったんだ。何なら今夜からでも……」

「ん?」

「跡継ぎを作れと」

「へえー、あの絵に描いたような貴婦人のお袋さんがか?」

「ああ。俺もびっくりしたよ」

「ま、それだけ緊急事態って事だな。で、頑張ったのか?」

「跡継ぎ作りか?」

「当たり前だろ?」

「それが、その……頑張れなかった」


兼続は、しばし唖然とした顔で俺を見た。そして、


「おいおい、そういう悩みとは思わなかったなあ。悪いが、俺は相談に乗れそうもないぞ」


と言って背もたれに上体を預けた。さも、“話はこれで終わり”、と言いたげに。俺はまだ、肝心な事は何ひとつ言ってないはずなのだが……

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