未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
背筋がゾワゾワっとした。

あの女性が言った事は本当で、部屋を出た瞬間、未来へタイムスリップした。そう考えるしかないのだろうか……

だが、どう考えてもタイムスリップなんてあるわけない。もしかして、俺は夢を見てたのだろうか。あるいは、頭が変になったのかも。


「はあ……。参ったなあ」


俺は思わず頭を抱え込んだ。


「旦那さま、どうされましたか?」

「え? ん……」


メイドが俺を心配してくれたが、彼女に事情を話す気にはなれない。とても信じてくれるとは思えず、逆に俺の頭がおかしと思われるのが関の山だと思うからだ。実際にそうなのかもしれないが。


「恋人さんが行ってしまったんですか?」

「違う!」


メイドの問い掛けに、つい俺は怒鳴ってしまった。メイドの勘違いは、状況からすると無理ない事で、それは十分に解っているのだが、無性に腹が立ったのだ。メイドに誤解されている事に。俺という人間が……


「申し訳ありません。私ったら、余計な事を……」

「いや、僕こそ悪かった。怒鳴ったりして……。でも分かってほしいんだ。僕は女性をここに連れ込んだりしてないし、今までだって一度もない」

「そうなんですか?」

「そうさ」

「という事は、旦那さまはもしかして、ゆ、幽霊を見たんですか?」

「え?」


思わず顔を上げると、メイドは怯えて泣きそうな顔をしていた。

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