未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「カードで引き出せばいい」

「それが、その……かなり大きな金額なので……」


百万やそこらなら、その辺のATMでわけなく引き出せるはずだ。小松はそういう事を知らないのだろうか。それとも気がひけるとか?
あるいは、もう少し上の金額なのだろうか……


「いったいいくら欲しいんだ?」

「はい。さ、さん……」


三百万かな、と思ったのだが、


「さ、三千万円です」

「なに!?」


俺は思わず驚いた声を出してしまった。予想した金額より、一桁多かったからだ。


「に、二千万円でも……」

「いや、いいよ。三千万ね。わかった……」


冷静に考えれば、三千万ぐらい大した事はない。俺や真田家が得る利益と、小松が払う代償を考えれば、むしろ少ないくらいだ。

それにしても、そんな金を小松は何に使うのだろうか……

それを聞いてみたかったが、「すみません」と言って項垂れた彼女を見たら、聞かないであげるべきだなと俺は思った。


「じゃあ、明日にでも銀行から届けてもらうよ。それでいいかな?」

「あ、はい。それと……」

「ん?」

他にも要求があるのだろうか。と思ったが……


「この事は、他の方には……」


つまり口止めだった。それはそうだろう。母や叔父達に知られたら大変な事になる。


「大丈夫。誰にも言わないよ。ただ、家の帳簿を管理している爺やには言わなければいけないが、俺が使うと言うよ。何かと物入りだからってね」

「ありがとございます」

「いいって」


爺やは怪訝に思うだろうが、そんなのは知った事か。理由を聞かれても、「必要だから」で通すつもりだ。


小松が金の話をしてくれて、おかげで吹っ切れたと思う。つまり、遠慮なくやらせてもらおう。跡継ぎ作りを……


小松が去ってから気づいたが、伊達政宗という男の事を聞きそびれてしまった。特に小松との関係を聞きたかったのだが、まあ、いいか。

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