未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
夕飯の時。
真田家の家族は、この、やたらと広いダイニングに集まり食事をしている。無駄に長いテーブルには真っ白なクロスが敷かれ、その上には、専属のコックが作ってくれた美味しそうな料理の数々と、シャンパンやワインが並べられている。
それらはいつもの事で、一見すれば普段と何も変わらない光景に見えるが、ひとつだけ変わった事がある。それは、家族の人数が一人増えている事だ。
その一人とはもちろん小松の事で、本来小松は俺のフィアンセであり、つまりはまだ他人のはずなのだが、既に一緒に暮らしている事と、結婚と出産を間近に控えている事もあり、すっかり俺の奥さん、すなわち真田家の“若奥様”的な扱いを受けている。
「小松さん、明日も忙しいわよ?」
テーブルを挟んで向かいに座る母が、俺の横にいる小松にそう言った。
「あ、はい」
「午前中は、まずお洋服屋さんが来て採寸して頂きます。その後は……」
「洋服を作るって事ですか?」
「そうですよ。真田家の嫁として恥じないように、お洋服を沢山作らないといけないでしょ? これから小松さんには、パーティやお客様の応対とか、表に出て頂く事がとても多くなりますからね」
「うわあ、大変そうだなあ」
「他人事じゃありませんよ、信之さん」
「は?」
「あなただってそうですよ。そしてあなたには、もっと真田家の当主らしくしてもらいます。いつまでも勝手気ままは許されませんよ?」
「はあ……」
母からこんな事を言われたのは、もしかすると初めてかもしれない。慶次の奴は、パンを口に頬張りながらクスクス笑っている。
“勝手気まま”かあ……。確かにそうだったかも、だなあ。
真田家の家族は、この、やたらと広いダイニングに集まり食事をしている。無駄に長いテーブルには真っ白なクロスが敷かれ、その上には、専属のコックが作ってくれた美味しそうな料理の数々と、シャンパンやワインが並べられている。
それらはいつもの事で、一見すれば普段と何も変わらない光景に見えるが、ひとつだけ変わった事がある。それは、家族の人数が一人増えている事だ。
その一人とはもちろん小松の事で、本来小松は俺のフィアンセであり、つまりはまだ他人のはずなのだが、既に一緒に暮らしている事と、結婚と出産を間近に控えている事もあり、すっかり俺の奥さん、すなわち真田家の“若奥様”的な扱いを受けている。
「小松さん、明日も忙しいわよ?」
テーブルを挟んで向かいに座る母が、俺の横にいる小松にそう言った。
「あ、はい」
「午前中は、まずお洋服屋さんが来て採寸して頂きます。その後は……」
「洋服を作るって事ですか?」
「そうですよ。真田家の嫁として恥じないように、お洋服を沢山作らないといけないでしょ? これから小松さんには、パーティやお客様の応対とか、表に出て頂く事がとても多くなりますからね」
「うわあ、大変そうだなあ」
「他人事じゃありませんよ、信之さん」
「は?」
「あなただってそうですよ。そしてあなたには、もっと真田家の当主らしくしてもらいます。いつまでも勝手気ままは許されませんよ?」
「はあ……」
母からこんな事を言われたのは、もしかすると初めてかもしれない。慶次の奴は、パンを口に頬張りながらクスクス笑っている。
“勝手気まま”かあ……。確かにそうだったかも、だなあ。