未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
御曹司の決断
「ご懐妊、って……妊娠ですか?」

「はい、さようでございます」

「本当に?」


小松を見て言うと、彼女は真っ赤な顔でコクっと頷いた。


「本日、お医者様に来て頂いて、間違いないと……」


と言ったのは爺やだ。


「医者?」


俺は咄嗟に男の医者が小松の体に触れる光景を思い描き、酷く不快に思ったのだが、


「女医様でございます」


の言葉にホッとした。


「奥様はじめ、みなさま大変に喜ばれました。もちろん私どももですが」


それはそうだろう。これで真田家はたぶん安泰なわけだから。しかし俺はと言うと……どうなんだろう。


聞いたばかりでまだ実感出来ない、というのもあると思うが、単純に喜ぶ気持ちにはなれない気がする。むしろ、“やってしまった”みたいな、何と言うか……そう、罪悪感だ。そんなものを感じてしまう。それと……

“終わってしまった”、という空虚感。あるいは喪失感も……

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