未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
その直後、俺は小松の部屋へと向かって行った。今決めた決意を、小松に告げるために。時間を置くと、決心がぐらついてしまいそうだから……


小松は、ベッドに仰向けになって横たわり、目を閉じていた。近付いて改めて小松を見れば、以前に比べると頬ははっきりとこけ、元々色白ではあったが、更に青白くなり、まるで病人のようだと思った。それは間違いなく悪阻のせいであり、そうさせたのは他でもなく、この俺なわけで……


「小松、すまない……」


思わずそう呟くと、おもむろに小松はその重そうな瞼を開いた。


「はっ。ご主人さま……」


小松は、痩せたせいか、ますます大きくなったように見えるその目で俺を捉えると、慌てて上体を起こそうとした。


「いいから寝ていなさい」


すかさず俺は、彼女の肩を手でそっと押さえた。久々に触れた小松の肩は、以前はそんな事はなかったのに、骨ばった感じがした。つまりは痩せたという事だろう。


「でも、行かないと……」

「弁護士の話は終わったよ。俺は君を呼びに来たんじゃないんだ。君に話したい事があったから……」

「私に、ですか?」

「ああ」


と言ったものの、小松に見つめられていると、その決心が鈍りそうになる。そうならないように、それと、おそらく辛い顔をするであろう自分の顔を、小松に見られないように、俺は小松に背を向ける形で、ベッドへ腰を下ろした。

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