未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
小松は無言だったので、俺は更に言葉を続ける事にした。


「だから、これから君は自由にしていいんだ。り、離婚の手続きは、俺の方でしておくから」


離婚と言う時、つい噛んでしまった。俺の心の動揺が、小松に伝わってなければよいのだが……


「それから、お腹の中の赤ん坊だが……堕してくれていい」

「えっ?」


それまで無言だった小松が、初めて声を発した。俺が言った事に、ショックを受けたのだと思う。当然の事だと思うが。

俺自身、それを言うべきかは相当に悩んだのだ。まだ芽生えたばかりとは言え、ひとつの命には違いなく、それを殺していいと言うのは、人の道に反する行為と言っても過言ではないだろう。しかし……


「もし産めば、その子はまず間違いなく真田家に引き取られる事になると思う。たとえ君が、どんなに抵抗したとしても。真田家にとっては、貴重な跡取だからね」


俺はこの先、誰とも結婚しないと思うからそうなるのだが、それは言わないでおいた。


「後で引き裂かれるぐらいなら、初めから産まない方がいいと思うんだ。君にとっては……」

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