未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
俺は懐から1枚の紙片を取り出し、手元に置いた。それは予め用意をした5千万円の小切手だ。
「これは俺の、君への感謝の気持ちだ。あるいは、慰謝料と思ってくれてもいい。これで家でも買って、政宗君と一緒に暮らすといい」
俺はそう言うとベッドから腰を上げ、ドアに向かって歩いて行った。言うべき事は全て言ったつもりだから。
「ご主人さま……」
俺がドアノブに手を掛けた時、背後で小松の声がした。思わず振り向きそうになったが、それを俺はグッと堪え、「何?」と答えた。
「私……明日出て行きます。このお屋敷から……」
「…………!」
という事は、もう小松を見る事すら出来ないという事だと思う。最後に、一目でも彼女を見たくて振り向きたいが、それは出来ない。なぜなら、今の俺の顔を小松に見られるわけには行かないからだ。目に涙をいっぱい溜めた、女々しい俺の顔なんか……
「そうか」
と言うのがやっとだった。嗚咽が漏れてしまいそうで。そして廊下に出た途端、堰を切ったように涙が俺の目から溢れ出した。
「これは俺の、君への感謝の気持ちだ。あるいは、慰謝料と思ってくれてもいい。これで家でも買って、政宗君と一緒に暮らすといい」
俺はそう言うとベッドから腰を上げ、ドアに向かって歩いて行った。言うべき事は全て言ったつもりだから。
「ご主人さま……」
俺がドアノブに手を掛けた時、背後で小松の声がした。思わず振り向きそうになったが、それを俺はグッと堪え、「何?」と答えた。
「私……明日出て行きます。このお屋敷から……」
「…………!」
という事は、もう小松を見る事すら出来ないという事だと思う。最後に、一目でも彼女を見たくて振り向きたいが、それは出来ない。なぜなら、今の俺の顔を小松に見られるわけには行かないからだ。目に涙をいっぱい溜めた、女々しい俺の顔なんか……
「そうか」
と言うのがやっとだった。嗚咽が漏れてしまいそうで。そして廊下に出た途端、堰を切ったように涙が俺の目から溢れ出した。