未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「それは後で話します。今は仕事中ですから」

『今すぐ帰って来れないの?』

「は? それは無理ですよ。この後も予定がびっしり詰まってるんですから……」

『そう……。だったら、なるべく早く帰って来てちょうだい』

「わかりました」


電話を切ってから、俺は思わず首を捻った。意外だったからだ。電話の内容は予想した通りだったのだが、母の様子が俺の予想と大きく違っていた。


母は、叔父や叔母もだが、俺が小松と結婚した事を快く思っていないと思う。小松は元メイドで、どこぞのお嬢様ではなく、身寄りのない娘だから。


であれば、小松が屋敷を出て行ったとしても、あの人達は大して驚かないのではないか。むしろ厄介払いが出来たと思って安堵するのではないか。そんな風に俺は予想していたのだ。

ところが、今の電話の様子では、母はかなり驚いていた。そして焦ってもいた。あのいつも冷静な母にしては大変珍しいが、間違いないと思う。

それと、声の感じで思っただけだが、母は小松の事を、とても心配しているようだった。

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