未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
契約の終わり
俺が家に帰ったのは、夜のかなり遅い時刻であった。母からは、早く帰るように言われていたのだが。
その理由のひとつは、なかなか仕事に区切りが付けられなかったからだが、もっと大きな理由は、帰りにくかったからだ。帰ってもどうせ小松は居ないし、母に小松の事を説明しなければいけない。
母にどう説明するかは、帰りの車中でも考えたのだが、決まらなかった。もちろん正直に有りのままを話すつもりはない。誤魔化す事になるのだが、どう誤魔化せばいいのやら……
「ただいま……」
「お帰りなさいませ。遅くまでご苦労様です」
爺やが俺を出迎えてくれたが、心なしか爺やの表情が暗く感じた。俺は、そんな爺やから視線を逸らし、無意識の内に爺やの後ろを探してしまった。そこに小松がいるはずもないのに……
「ご夕食はいかがなさいますか?」
「……食べて来た」
というのは嘘だが、食欲がなかった。
「さようですか」
「あ。後でいいんだけど、酒を持って来てくれないかな?」
「お酒、でございますか?」
「そうだけど?」
爺やは酷く驚いたようだ。と言うのは、俺はあまり酒は好きでなく、爺やもそれはよく知っているからだ。
「何をお持ちしましょうか?」
「ん……何でもいい。ウイスキーかブランデーか、とにかく強い酒がいいな」
「かしこまりました」
俺はとにかく酔いたかった。酔って、小松の事を忘れたかった。忘れられるものならば……
だが、その前に母と話さなければいけない。あるいはもう母はお休みだろうか。だと助かるんだけどな。
俺は重い足を引きずるようにして、母の部屋へと向かって行った。
その理由のひとつは、なかなか仕事に区切りが付けられなかったからだが、もっと大きな理由は、帰りにくかったからだ。帰ってもどうせ小松は居ないし、母に小松の事を説明しなければいけない。
母にどう説明するかは、帰りの車中でも考えたのだが、決まらなかった。もちろん正直に有りのままを話すつもりはない。誤魔化す事になるのだが、どう誤魔化せばいいのやら……
「ただいま……」
「お帰りなさいませ。遅くまでご苦労様です」
爺やが俺を出迎えてくれたが、心なしか爺やの表情が暗く感じた。俺は、そんな爺やから視線を逸らし、無意識の内に爺やの後ろを探してしまった。そこに小松がいるはずもないのに……
「ご夕食はいかがなさいますか?」
「……食べて来た」
というのは嘘だが、食欲がなかった。
「さようですか」
「あ。後でいいんだけど、酒を持って来てくれないかな?」
「お酒、でございますか?」
「そうだけど?」
爺やは酷く驚いたようだ。と言うのは、俺はあまり酒は好きでなく、爺やもそれはよく知っているからだ。
「何をお持ちしましょうか?」
「ん……何でもいい。ウイスキーかブランデーか、とにかく強い酒がいいな」
「かしこまりました」
俺はとにかく酔いたかった。酔って、小松の事を忘れたかった。忘れられるものならば……
だが、その前に母と話さなければいけない。あるいはもう母はお休みだろうか。だと助かるんだけどな。
俺は重い足を引きずるようにして、母の部屋へと向かって行った。