未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
自分の部屋に戻ると、テーブルの上に封を切ってないウイスキーのボトルとグラスと氷や水、それとナッツやチーズなどが置かれていた。爺やかメイドが持って来てくれたのだろう。

俺は上着を脱ぎ捨て、タイを首から引き抜くと、着替えはせずにウイスキーの栓を開いた。そしてグラスにトクトクと注ぎ、その琥珀色の液体を一気に喉へ流し込んだ。


ま、まずい……


すると、喉が焼けるように痛み、頭にカーッと血が登るのがわかった。更にもう一口飲むと、今度は目の前がグラグラっと揺れ、立っていられなくなり、ソファに崩れるように座った。たった2口しか飲んでないのに、もう酔っ払ってしまったらしい。


目を閉じると、すぐに瞼に浮かんだのは小松の顔だった。メイドの時の人形のような小松。頬を膨らませて怒った顔の小松。そして、青白い顔で横たわっていた時の小松……

酒に酔えば彼女の事を忘れられるかと思ったが、それは全くの逆効果だった。小松は今どうしているだろうか。体は大丈夫なのか?

小松に会いたい。せめて声だけでも聞きたい。


おそらくシラフでは出来なかったと思うが、俺はケータイを掴むと、迷う事なく小松の番号を呼び出していた。

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