未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
ケータイを耳に当て、しばらく待ったが小松は電話に出ない。もう夜中だからな、寝てるんだろう。

そう思って呼び出しを止めようとしたら、小松が出た。


『……もしもし』


はあー、小松の声だ……


『もしもし?』

「ああ、ごめん。こんな夜中に……」

『いいえ。どうかされましたか、ご主人さま?』

「あ、いや、君の事が心配になってね。大丈夫かい?」

『……大丈夫です』

「そう? それは良かった。あはは」


俺は、可笑しくもないのに笑ってしまった。酔ったせいだと思うが。


「君には本当に悪い事をしたと思ってる。でもさ……」

『ご主人さま、もしかして酔ってます?』

「あ、ああ。酔ってまーす。それでさ、何だっけ。ああ、そうそう。君は酷い目に会ったけどさ、代償も得たよな? 合わせて8千万。結構な金額さ。それで家でも建てて、誰かさんと結婚したらいい」


俺はいったい何を言ってるんだ?
何でこんな心にもない事をペラペラ喋ってるんだ?


『私は、ご主人さまが思うほど、お金の亡者じゃありませんから』

「またまたあ。無理しなくていいって。誰だって金は欲しいさ。そうだろ?」


うわ。誰かこの口を止めてくれ……


『まだ気付いてらっしゃらないみたいですけど、昨夜のお金はお返ししましたから。ダイヤの結婚指輪と一緒に、ご主人さまの枕元に置いてあります』

「えっ? うそ……」

『もう電話しないでください』

「ちょ、ちょっと待って……」


そこで通話は切れてしまった。


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