未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
それから約1ヶ月が過ぎた。


あれ以来、小松とは連絡を取っていない。“もう電話しないで”と言われたからだが、そもそもは俺が酔って酷い暴言を吐いたのがいけなかったのだ。

かと言って離婚の手続きもしてなくて、要するに俺は何もしてないに等しい。今の俺はまるで抜け殻だ。会社へは毎日通い、遅くまで残っているので、傍目には仕事一筋に見えるかもしれないが、仕事ぐらいしかする気になれないってだけの話だ。

この一ヶ月間、毎日が無為のままに過ぎて行った。おそらくこの先もずっとそうだろう。いっその事、早く寿命が来ればいい、なんて事を思ったりしている。


家では全くの無口になった。というか、殆ど人と接しないようにしている。小松の事を聞かれるのが嫌だからだ。さすがの母も最近は諦めたらしく、俺に話し掛けなくなって来た。


そんなある日の会社での事、トントンとノックの音がして、俺の部屋に秘書の山内さんが入って来た。


「常務、受付に面会したいという人が来てるそうです」

「僕にですか?」

「そうです。アポがないとお会いになれませんと言ったら、どうしても会いたいと言って聞かないそうです。名前を言えば、常務はきっとお会いになるはずだと……」

「ふーん、強引な人ですね。名前は何ていうんですか?」

「はい。伊達政宗さんという方だそうです」

「伊達……!?」

「どうしましょうか?」

「上がってもらってください」

「わかりました」


あの男が、俺に?

おそらく小松絡みとは思うが、いったい俺に何の話があるというのだろうか……

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