未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
少しして、山内さんの案内で俺の役員室に黒い眼帯をした背の高い、と言っても俺と同じくらいだが、男が入って来た。


その男は、黒のブーツに黒のスリムのジーンズを履き、同じく黒の、たぶん麻のジャケットを引っ掛け、眼帯も黒で髪も黒。上から下まで正に黒ずくめだ。

まだ眼帯をしているという事は、目の怪我はもう治らないのだろうか。だとしたら気の毒だな。


山内さんが去り、そんな事を考えながら、俺はその男、伊達政宗に近付いて行った。伊達政宗は、そんな俺を隻眼で見ていた。いや、睨んでいたと言うべきだろう。よく見れば端整で綺麗な顔をしているのだが、今はそんな悠長な事は言っていられない。その男の目に宿るのは、はっきりと憎悪だからだ。殺意と言ってもいいぐらいの、激しい怒りだ。


男も俺に近付いて来た。真っ直ぐに俺を睨みながら、ゆっくりと。俺は身の危険を感じ、立ち止まると身構えた。が、その時ふとある事に気付いた。伊達政宗の顔が、誰かに似ているのだ。隻眼ではあるが、くっきりとした二重の大きな目。鼻筋が真っ直ぐに通った小さめの鼻。そして、綺麗な桜色した唇……


ああ、そうか、と判るのと同時だった。ガツンという鈍い音と共に、俺は顔に強い衝撃を受けていた。

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