未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「父は、昔は会社を経営してたんです。地元の小さい会社でしたけど」
ああ、なるほどね……
母さんが言っていた、小松は元ご令嬢かもしれない、というのはアタリだったんだなあ。
「ところが、リーマンショックの頃から徐々に経営が破綻して、終いには倒産したんです。借金をいっぱい抱えて。その頃から母は精神を患うようになって、間もなく両親は離婚しました。俺は父とアパートで暮らし、姉貴は祖父がいた母の実家で暮らすようになったんですが、その祖父は間もなく死に、母は心の病がますます酷くなって入院しました。そして一昨年、父はガンで死にました。だいぶ少なくはなったらしいですが、借金を残したままで」
政宗君の話はあまりに気の毒過ぎて、俺は何も言葉に出来なかった。
「姉貴は、高校を卒業すると地元の会社で働きだしました。俺も当然そうしようと思ってたんですが、姉貴は俺に大学へ行けって言うんです。俺の将来のために。そのための入学金や、母の病院の費用、それと父が残した借金の返済も、全部自分が何とかするからって……。冷静に考えれば、そんなの到底無理なんですけどね。当時の俺は世間知らずだったから、姉貴の言う通りにして東京の大学を受け、上京してアパートを借りました。あ、俺もバイトして、自分の学費ぐらいは自分で稼いでますけどね」
俺は、ただ「うん、うん」と頷く事しか出来なかった。そう言えば、俺が小松の嘘を暴き、“そんなに金が欲しいのか?”と言った時、小松は怒ったような顔で“お金は好きです”と言ったっけ。“あなたのような人には、お金の有りがたみはわかりません”とも……
小松のこれまでの苦労を考えたら、可哀相で涙が出て来てしまった。
ああ、なるほどね……
母さんが言っていた、小松は元ご令嬢かもしれない、というのはアタリだったんだなあ。
「ところが、リーマンショックの頃から徐々に経営が破綻して、終いには倒産したんです。借金をいっぱい抱えて。その頃から母は精神を患うようになって、間もなく両親は離婚しました。俺は父とアパートで暮らし、姉貴は祖父がいた母の実家で暮らすようになったんですが、その祖父は間もなく死に、母は心の病がますます酷くなって入院しました。そして一昨年、父はガンで死にました。だいぶ少なくはなったらしいですが、借金を残したままで」
政宗君の話はあまりに気の毒過ぎて、俺は何も言葉に出来なかった。
「姉貴は、高校を卒業すると地元の会社で働きだしました。俺も当然そうしようと思ってたんですが、姉貴は俺に大学へ行けって言うんです。俺の将来のために。そのための入学金や、母の病院の費用、それと父が残した借金の返済も、全部自分が何とかするからって……。冷静に考えれば、そんなの到底無理なんですけどね。当時の俺は世間知らずだったから、姉貴の言う通りにして東京の大学を受け、上京してアパートを借りました。あ、俺もバイトして、自分の学費ぐらいは自分で稼いでますけどね」
俺は、ただ「うん、うん」と頷く事しか出来なかった。そう言えば、俺が小松の嘘を暴き、“そんなに金が欲しいのか?”と言った時、小松は怒ったような顔で“お金は好きです”と言ったっけ。“あなたのような人には、お金の有りがたみはわかりません”とも……
小松のこれまでの苦労を考えたら、可哀相で涙が出て来てしまった。