未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
「ある日、姉貴はテレビで見たんだそうです。真田家の妙な遺言書の事を……」

「テレビ? テレビで報道したのかい?」

「そうらしいですよ。俺は知りませんけど」

「ふーん、俺も知らなかった」

「それを見て、姉貴はチャンスだと思ったそうです。どこかのご令嬢を真田家の嫁にして、自分は謝礼を貰おうと考えたそうです。で、高校の時の友達が地元では有名な名家のご令嬢なんで、その人に話したそうです」

「それが浅井さんかい?」

「そうです。でも、その友達では信之さんと歳が違い過ぎるって事で、友達のお姉さんに声を掛けたんだそうです。歳はいい感じだし、独身だし、性格には難ありですが、顔はそこそこの美人だからって……」


浅井菊子さんか……。確かに、そんな感じだな。


「まずは偵察を兼ねて、姉貴は住み込みのメイドとして真田家に潜入しました。そして、妙な策略を考えたそうです。タイムスリップとかいう……。姉貴はSFやファンタジーが好きなものですから」


ああ、あれは小松の発案だったのか……


「そんな子ども騙し、すぐバレるに決まってるのに……」

「そうでもないよ。危うく騙されるところだった」

「え? そうなんですか?」

「あ、ああ。それで?」

「その後は信之さんの方が俺より詳しいでしょ? つまり、姉貴達の嘘がバレて、でも信之さんの提案で契約したって事ですよね?」

「うん、確かに……」


最後は契約かあ。結局はそこに行き着くわけで……


「その契約は終わってしまった。そういう事だよね?」

「信之さん、逆に聞きたいんですけど、いいですか?」

「ああ、いいけど?」

「信之さんはそれでいいんですか?」

「と言うと?」

「今のままでいいのか、って事です」

「いいも悪いも、もう終わった事だし……」


俺が言葉を濁すと、政宗君は「ふー」と息を吐いた。


「ズバリ聞きます。あなたは姉貴の事、好きですよね?」

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