未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
目をつぶり、衝撃に備えたのだが、いっこうにそれは来ない。あれっと思って目を開くと、政宗君は微笑んでいた。


「もう殴りませんよ。それ以上あなたの顔を傷付けたら、姉貴に怒られますから」

「あ……そう? じゃあ、俺は失礼するよ」

「はい。あ。姉貴はアパートにはいませんよ」

「何? どこにいるんだ?」

「体が良くなったからって、近所のスーパーで働いています」

「そうか。その場所を教えてくれないか?」

「はい。えっと……」


俺は政宗君からそのスーパーの場所と名前を聞き、役員室を飛び出そうとしたのだが……


「信之さん」


政宗君に呼び止められた。


「ん?」と振り向くと、


「姉貴の事、よろしくお願いします。幸せにしてあげてください」


と言って、政宗君は俺に頭を下げた。


「おお、任せてくれ。君が言った通りだったら、だけどな」


そう答えて俺は部屋を飛び出した。


「山内さん、大至急車を用意してください!」

「は、はい」

「それと、今日の予定は全てキャンセルしてください」

「はい」

「それから、直江君にその事を伝えてください」

「はい。でも、理由は何て言えば良いのでしょうか?」

「そうだなあ。一生の大事、とでも言ってください。詳しい事情は後で話すからと」

「わかりました」


一生の大事かあ。正にその通りだよな。ああ、早く小松に会いたいなあ……

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