未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
そして車はスーパーに着いた。そこから屋敷までは歩いても大した距離ではないのだが、俺はある考え、それはひとつの賭けではあるのだが、があって、運転手さんには車を駐車場に停めて待ってもらう事にした。


車を降り、外の空気を吸うと、とても爽やかな気持ちがした。このところは季節を思う心のゆとりがなかったが、いつの間にか季節は春真っ盛りになっていた。

ん? 真っ盛りって言うのは夏かな。春は爛漫か?
まあ、いいや。


春の柔らかい陽射しを浴びたせいか、不安や緊張が胸の中ですーっと落ち、期待だけが残ったような気がした。俺は大きく息を吸って胸を張り、正面からスーパーに入って行った。


ところが……

あれ? どこを探せばいいんだろうか……

考えてみたら、俺はスーパーという所には殆ど来た事がなかった。レーサー時代に多少はあったかな、という程度。

平日のせいか人はまばらだが、やたらと広い。仕方なく、俺は端から端まで歩き、じっくりと小松を探す事にした。


「ご苦労様です」


ここの店員は、なぜか俺に向かってそんな言葉を使った。「いらっしゃいませ」ではなく。今はそれが流行りなんだろうか……


なかなか小松が見つからず、さすがにイライラしだした時、男の店員ぽい人が俺に話し掛けて来た。


「ご苦労様です。私はここの店長です。私が店内をご案内しますので」


デパートの店員のような応対だが、こういうのも今時のスーパーの流行りなのか?

だとしても、俺には店内をのんびり見学する予定も時間もなく、


「いいえ、それには及びません」


とやんわり断ったところで、ちょうどいいやと思い、


「本多小松という店員がいるはずなんですが、見つからなくて困ってるんです」


と言ってみた。すると、


「は、はい、おります。まだ新人ですが。私がご案内しましょう」

「ありがとう。助かります」


やっぱりいたか。良かった……

それにしても、スーパーの店員って親切なんだなあ。うちの会社も見習わなくちゃだな。

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