未来から来た花嫁 ~迷走する御曹司~
駐車場で運転手さんが俺を待ってくれてるはずだが、車に乗る前に小松と二人だけで話をしたい。そう思って辺りを見回したら、ちょっとした子どもの遊び場みたいなスペースがあり、そこにはベンチが設置されていた。


「小松、あそこに座って話さないか?」

「あ、はい」

おあつらえ向きに、缶ジュースの自販機もあった。


「何か飲もうか? 喉が乾いたから」

「はい。でも……」


俺がポケットから小銭を探していると、小松は何かを言いたげにしていた。


「何?」

「あ、はい。こういう庶民的な飲み物を、ご主人さまも飲まれるのかなあ、と思いまして……」

「そりゃあ飲むさ。たまーに、だけどね。しかし困ったなあ。小銭が見当たらない」

「それぐらい私が……あっ」

「どうした?」

「お財布を置いて来ちゃいました。バッグごと」


それはそうだろう。仕事中の小松を、俺は無理矢理引っ張り出したのだから。かと言って、今からスーパーに戻るのは変だしなあ。


「たくさん入ってるのかい?」

「そんなわけないじゃないですか……」

「だったら、後で取りに行くって事でいいかな?」

「それはまあ、いいですけど……」

「しかし困ったなあ。俺はこの缶コーヒーが無性に飲みたくなって来た」

「千円札もないんですか?」

「千円札? それならあると思うけど?」

「だったらそれで買えばいいんですよ?」

「そうなのか? 自販機って、コインしか使えないんじゃないのか?」

「千円札なら使えますよ。スイカで買える自販機もありますよ?」

「そうなのか?」


結局、千円札は持っていたものの、その使い方がわからず、小松に操作してもらった。情けない話なのだが……

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